新人コールセンター管理職が知っておくべき用語【アウトバウンド編】
こんにちは。コンサルタントの山北です。
今回は新人コールセンター管理職が知っておくべき用語【アウトバウンド編】を書いていきたいと思います。コールセンターの種類は主に2種類に大別されます。お客様からお電話がかかってくる「インバウンド」と、リストのお客様にお電話をこちらから発信する「アウトバウンド」です。インバウンドの中でも折り返しで発信することをアウトバウンドと呼ぶこともありますが、今回は主業務としてお客様のリストに対して発信する業務を「アウトバウンド」として、知っておくべき用語を解説していきます。アウトバウンドの業務と言っても様々あります。
- 既存顧客へ新商品の案内や営業
- 新規顧客獲得を目的とした商品の案内や営業
- 料金未払い顧客への督促
- 既存顧客へのアフターフォロー
- アンケートや調査
業務内容により知っておくべき内容は変わる場合がありますが、基本的な内容をまとめています。アウトバウンド業務の基本として新人コールセンター管理者の方に是非見ていただければと思います。
コールセンター管理職が知っておくべき用語シリーズ
- 新人コールセンター管理職が知っておくべき用語【生産性編】(1)
- 新人コールセンター管理職が知っておくべき用語【生産性編】(2)
- 新人コールセンター管理職が知っておくべき用語【アウトソーサー編】
- 新人コールセンター管理職が知っておくべき用語【アウトバウンド編】
- 新人コールセンター管理職が知っておくべき用語【営業力編】
- コールセンター管理職が知っておくべきKPI10選
アウトバウンドの効率はシステムに依存する領域が大きい!?
アウトバウンド=発信業務と言われると、コミュニケーター自身でお客様の番号を「090…」のように電話機やPC上のソフトフォンでダイヤルすること(手動発信)をイメージする方もいらっしゃるかもしれませんが、現在は顧客リストに対してシステムで一斉に自動で発信していく手法が一般的です。
自動発信には下記のような種類があります。
クリックトゥコール(プレビューダイヤラー)
PCの画面上などで電話番号をクリックして発信できるシステムです。手動でダイヤルが不要な分、効率的に発信ができます。しかし1件1件発信していくことになりますので、プレディクティブコールやプログレッシブコールより効率は悪くなります。事前に顧客情報や過去の対応履歴をしっかり確認して、発信する必要がある業務に向いています。
プレディクティブコール(ダイヤラー)
顧客リストに対しシステムで自動に発信し、お客様が応答した発信をコミュニケーターに着信させるシステムです。発信のためのダイヤル、お客様が出るまでのコール待ちをしなくて済むので効率的に業務が行えます。(コミュニケーターは応答したお客様との会話に集中できます)また複数のリストに対し一斉に発信ができる点も効率的ですが、対応できるコミュニケーター数より多く同時に発信できるため(コミュニケーター5名に対し200%(10件)の設定など)、コミュニケーターが全員対応中にそれ以上のお客様とつながってしまう可能性があります(その場合はIVRで音声を流すなどの対応になります)。さらに、つながらなかった日、曜日、時間帯などをデータとして自動取得できるため、コンタクト率を上げるためのデータ取得が可能になります。
プログレッシブコール(ダイヤラー)
プレディクティブコールと似ていますが、こちらは対応できるコミュニケーター数と同数まで同時に発信ができるシステムです。対応できるコミュニケーター数と同数までですので、プレディクティブコールのようにコミュニケーター数以上のお客様が電話に出てしまうというリスクを避けることができますが発信効率は劣ります。お客様へのコンタクト率が高い業務の場合はプログレッシブコールの方が良いでしょう。
※手動での発信に対し、プレディクティブコールやプログレッシブコールを使うことで5倍~10倍の効率で業務を行うことも可能です。また、つながりやすい曜日や時間帯を特定しコンタクトできる確率を上げるためにも、システムで取得できるデータを蓄積し分析することが望ましいです。
アウトバウンド業務で知っておくべき用語
アウトバウンド業務で一般的に知っておくべき用語は以下となります。特にアウトソーシングで外部にアウトバウンド業務を委託する場合などは基本的な用語を理解しておかなければ良好な関係が築けないケースも出てきますので少し難しい言葉も出てきますがしっかり理解しましょう。また、アウトソーシング側で就業している管理者の方も、クライアント先と話をする際によく出てくる用語ですので確実に頭に入れておきましょう。
リスト数
アウトバウンドの顧客リストの数です。発信するリスト数によって必要なコミュニケーター数は変わります。発注側の場合はリスト数とリストの質によって見込める売上や成果を予測することが可能です。
リスト精査
リスト数を多くすれば売上や成果が上がるわけではありません。過去に何度発信してもつながらない顧客や、話を一度も聞いてもらえたことがない顧客など成果が見込めない顧客はかけても双方にメリットがないため、過去の発信履歴やコンタクト状況などを分析し、成果に繋がりづらいリストを精査しましょう。
コール回数
アウトバウンドはまずお客様とコンタクトができないと意味がありません。そのため、実施する際は「(不通の場合)お客様に何回発信するか?」というコール回数を契約上決めます。発信回数を増やせば増やすほどコンタクトできる確率は上がりますが、何度もかかってくると迷惑・不快と感じるお客様も当然増えますのでバランスが重要です。3回程度の発信が一般的な目安となります。
リスト単価/時間単価
アウトバウンドを外部に委託する場合、当然費用が発生します。アウトバウンド1リストに対して〇円、といった契約をリスト単価と言います。これに対し、コミュニケーター1名を1時間確保した場合〇円、という時間単価という契約もあります。一般的にはリスト単価での契約が主流です。基本的にコンタクトできなくてもリスト単価は発生します。リスト単価に加え、誓約するとインセンティブ〇円という形で成果報酬制と組み合わせて契約される場合もありますし、別途管理費が発生するケースもあります。外部に委託せず、社内で実施する場合でも当然給与は発生していますので1時間当たりの発生費用は試算しましょう。
投資対効果/投資回収期間
アウトバウンドの目的を達成できているかは投資対効果、もしくは投資回収期間で見るケースが多いです。商材や業種により計算方法は違いますが、例えば通販会社が新発売した化粧品を、既存のお客様に定期販売するアウトバウンドを実施したとします。アウトバウンド費用、商品原価、配送費用などが発生し、アウトバウンドで購入いただいても初回は基本的に赤字になります。この赤字をその後の定期で回収していきますが、何か月後に回収できる目標で実施するのかを設定し、獲得した顧客の継続状況から投資対効果が合っているかの検証も必要です。アウトバウンド実施時は、投資対効果を試算するためCPC、CPL、CPOといったKPIを設定するケースがあります。詳細は次の「アウトバウンド業務で知っておくべきKPI」でご紹介しています。
アウトバウンド業務で知っておくべきKPI
アウトバウンドで一般的に管理されるKPIは以下のものになります。
発信数/コール数
お客様のリストに発信した件数です。プレディクティブコールの場合はシステム上で発信した件数になりますので手動発信より数倍多くなります。ただ発信数が多ければよいという訳ではなく、コンタクトできる確率を上げることが重要です。コンタクトしやすい時間や曜日などの分析を行うことが重要です。
コンタクト率/完了率
お客様にコンタクトできた割合を示すKPIです。
計算例:500件(コンタクト数)÷1000件(リスト数)=50%(コンタクト率)
コミュニケーターの育成をいくら頑張っても、お客様とお電話がつながらなければ意味がありません。コンタクト率を上げていくことがアウトバウンドの成功の第一条件です。固定電話か携帯かでもコンタクト率は大きく変わります。コンタクトしやすい顧客の特性を分析し、リスト精査を定期的に行いましょう。
成約率/SPL(セールスパーリスト)
顧客リストに対する制約の割合を示すKPIです。
計算例:50件(成約数)÷1000件(リスト数)=5%(成約率)
商品の営業アウトバウンドの場合、1000件にかけて50件成約できる場合成約率は5%となりますが、この成約件数×商品単価で売上がいくらになるか見込むことができます。
SPC(セールスパーコンタクト)
コンタクト数に対する制約の割合を示すKPIです。
計算例:50件(成約数)÷500件(コンタクト数)=10%(SPC)
コンタクトできた顧客のうち成約できた割合が確認できるため、SPCが低い場合は通話の分析などを行いトークスクリプトのブラッシュアップなど対策を行います。
稼働率
生産性編(2)でもご紹介しましたが、コミュニケーターの就業時間(ログイン時間)のうち、お客様対応(稼働業務)を行っているの時間の割合。
就業時間=稼働業務時間+非稼働業務時間となります。
計算例:稼働業務時間6時間 ÷ 就業時間8時間=稼働率75%
稼働業務時間とは?
- 就業時間内で実際にお客様対応をしている時間
- 発信通話時間、保留時間、後処理時間、受け待ち(受け可)時間
非稼働業務時間とは?
- 就業時間内でお客様対応をしている”以外”の時間
業務開始/終了準備、小休憩、研修や会議などの時間など稼働率が高まれば、それだけ発信できる件数は増えますが、コミュニケーターの負荷が高くなります。適切な休憩時間、教育時間などを確保しバランスを取ることが大切です。
AHT(エーエイチティー):Average Handling Time
こちらも生産性編(2)で触れていますが、1コールあたりの通話開始から後処理終了までに要した時間のことをいいます。
一般的に対応時間に含まれるのは通話時間(ATT)+保留時間+後処理時間(ACW)(+平均発信準備時間)の合計。
計算例:通話時間7.5分(450秒)+保留時間0.1分(6秒)+後処理時間2.4分(144秒)=AHT10分(600秒)
平均処理時間の短縮は、生産性向上やコスト削減に大きく影響します。また、アウトバウンドの場合の通話時間は、通話の内容により適正か判断が必要です。冒頭でお客様に不快な印象を与えてしまい、クレームになり長くなってしまっているケースが多いです。商品の説明など適正に時間を使えているか、モニタリングして通話の内容を必ず確認しましょう。
CPL(コストパーリスト)/CPC(コストパーコンタクト)/CPO(コストパーオーダー)
CPLは1リスト当たりに要したコストです。
計算例:50万円(総業務コスト)÷1000件(数)=500円(CPL)
CPCは1コンタクト当たりに要したコストです。
計算例:50万円(総業務コスト)÷500件(コンタクト数)=1,000円(CPC)
CPOは1成約当たりに要したコストです。
計算例:50万円(総業務コスト)÷50件(数)=10,000円(CPO)
コストは人件費や通信費、ファシリティに要した費用など、業務に応じたコストすべてを含みます。上記の例の場合、1件コンタクトをするためには1,000円、1件リストを発信するためには500円、1件成約するには10,000円かかるということです。基本的に下がれば下がるほど獲得効率が上がる(成果が上がる)ことになりますが、下げすぎるとコミュニケーターの負荷が大きくなりすぎるケースもあります。投資対効果を出すために、それぞれいくら以下を目指していくのかを決めて適切な目標設定をして取り組みましょう。
最後に
アウトバウンドの用語・KPIについて書いてきましたが、アウトバウンドで最も大切なことは「なんのためにやるのか?」を施策担当者が理解することです。新商品を買っていただく場合でも、ただ買ってもらえばいいのではなく「お客様がその商品を使って気に入ってくださり、使い続けてくださること」が大切です。その理解が、良いトークスクリプトやKPI管理に繋がっていきますし、コミュニケーターにも伝わっていきます。用語やKPIは管理する上での基本として理解いただき、施策の目的を達成できるよう良いアウトバウンド施策の一助となれば幸いです。
アウトバウンドの成果がでない、どこを改善すればよいか分からないなどお悩みに関するご相談がございましたら、オンライン無料相談(30分)を行っておりますので、下記よりエントリーをお願いいたします。ご相談、お待ちしております。
引き続きコールセンター業務に従事する皆様に活用いただけるブログを書いていければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
コールセンター管理職が知っておくべき用語シリーズ
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記事を書いた人
Cプロデュースコールセンターコンサルタント/アウトソーサー企業、化粧品通販会社等でコンタクトセンターに従事。顧客とのコミュニケーション設計構築から現場運用、委託先パートナー企業の管理を得意とする。
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