意外と知らない?自社運営のコールセンターとアウトソーシングの違い4選
こんにちは。コンサルタントの山北です。
今回は自社運営のコールセンターとアウトソーシングの違いについて書いていこうと思います。コールセンター運営を生業とする、いわゆるコールセンターのアウトソーシング(外部委託)の市場規模は年々大きくなっており、2020年以降1兆円を超えています。コロナ禍での非対面接客であるコールセンターへのニーズの増加、在宅コールセンター化に向けたシステム導入が増えたことなどもあり、市場は右肩上がりで拡大を続けています。コールセンターの運営に携わっている方から弊社によくご相談いただくのが、「自社で雇用し運営するコールセンターが良いのか、アウトソーシングしたほうが良いのか、両方活用したほうがいいのか迷っている」というお悩みです。結論から申し上げると、事業内容やコールの繁閑、コールセンターの役割など様々な要素によりどう運営することが最適かはケースバイケースです。ただ、最適な運営に向けた第一歩として、自社運営とアウトソーシングの違い(メリット・デメリット)を理解することが重要です。今回はその違いを具体的に書いていこうと思います。
コールセンター運営に必要な4つのもの
みなさん、「コールセンターの運営に必要なもの」を聞かれて何を想像されますか?少し考えてみてください。(立ち上げのプロセスではなく、物理的に必要なモノを想像してくださいね。)立ち上げるコールセンターの目的やミッションにより変化しますが、主には下記の4つに区分されるかと思います。この4つの軸を押さえて、自社運営とアウトソーシングのメリットデメリットを考えていきましょう。
(1)人員 | コミュニケーター、スーパーバイザー、マネージャー、その他業務(例えば応対品質管理や予算管理、研修トレーナーなど)を行う人員 |
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(2)システム | 業務を行うために必要なPBXなどの受電システムやCRM(顧客管理)システム、勤怠管理や周知掲示板、メッセンジャーなど |
(3)場所 | 業務を行うために必要な業務スペース。立地や広さ、休憩室や研修・会議室など |
(4)備品 | 業務を行うために必要なPCやヘッドセット、電話機、デスクや椅子、ロッカーなど |
比較1:人員
自社運営の場合
メリット
自社の理念や提供サービスについて落とし込みやすい
自社で直接雇用するため、帰属意識を醸成しやすく理念への共感や、提供しているサービスに対しての落とし込み、指導をしやすいです。
コールの繁閑が少ない場合はコストメリットが出しやすい
アルバイトの場合などは、アウトソーシングよりコストメリットが出しやすいです。(ただし、繁閑が大きい場合は余剰時間が多く出てしまうケースなどもあります)
KPIの達成に向けた指導・運用作りがしやすい
直接雇用の場合はコミュニケーターにトークなどの指導がしやすく、また、評価制度などの運用も自社で作れるためKPI達成に向けた取り組みがやりやすいです。
様々な業務を行うことができる
雇用契約内容にもよりますが、一般的にアウトソーシングに比べ様々な業務を行うことができるため柔軟性があります。
デメリット
採用コストがかかる&採用に時間がかかる
自社で直接雇用となるため、正社員でもアルバイトでも採用コストがかかります。また、採用媒体や人材紹介等で人員を集めても、アウトソーシングより時間がかかることが一般的です。
コールの繁閑に人員調整できる幅が狭い
短期的に人を増やす、減らすということができないため人員調整の幅が狭くコールの繁閑が大きい業務は自社運営だけでは応答率の担保ができない、不要なコストが多く発生するなどのデメリットが出てきます。
アウトソーシングの場合
メリット
立ち上げ・人員補填スピードが速い
アウトソーシング先は複数拠点を既に持っていることも多く、多くの人員を抱えています。立ち上げや増員に必要な人員をクイックに準備ができるため、短期間での立ち上げに向いています。
コールの繁閑に合わせて柔軟な人員調整が可能
上記に記載の通り、複数拠点を持っていることからコールの繁閑に合わせて柔軟な人員調整ができます。(専任・マルチなどの契約形態によります)ただし、繁忙の時のみ調達された人員は自社の業務理解が十分ではないケースなどもあるため注意が必要です。
デメリット
理念や帰属意識の醸成、複雑なオペレーションはできないケースがある
アウトソーシングの場合は下請法などにより基本的に直接コミュニケーターへの指導ができないため、自社の熱や想いが十分に伝わらない可能性があります。また、複雑なオペレーションは実施できない(断られる)場合もあります。
コストメリットが出ない
アウトソーシング先は人員確保のスピードが速い、人員調整の柔軟性などのメリットがある分、単価が高くコストメリットが出ないケースがあります。特に繁閑が少なく安定したコール数の業務の場合はコストメリットが出づらいことがあるので注意しましょう。
KPIの達成に向けた指導ができない
デメリットの1つ目にも記載していますが、基本的にコミュニケーターへの直接指導はできず、アウトソーシング先のスーパーバイザーが指導することになるため、思うような指導やKPIの向上が期待できないことがあります。
実施できる業務は契約書の範囲内
これは当然のことではありますが、契約にある業務以外はできません。自社雇用と比較し、柔軟に業務を行うことはできないということを理解しておきましょう。
比較2:システム
自社運営の場合
メリット
自社のサービスに合ったシステムを選ぶことができる
コールセンターが目指すミッションや、業務に必要なシステムを自社運営の場合はすべて選ぶことができます。予算に合わせて必要なシステムを選定できるため、適正に設計ができれば顧客に提供する価値を向上させることができるでしょう。
システム費用が割安になる
アウトソーシング先のシステムを使用するよりも、保守や運用を自社で行う分、同じシステムであれば自社運用したほうが割安になるケースがあります。
デメリット
導入まで時間がかかる
自由にシステムを選ぶことができる分、選定したり、社内稟議を上げたり、システムの設定や運用方法を決めたりと導入までに時間がかかることが多いです。
契約期間や支払いのリスクに注意が必要
万が一業務が終わることになっても、一定期間契約が必要であったり、減価償却費の償却前に終わってしまったり、年間分の料金を一括支払いが必要などのケースもあります。そういったリスクを踏まえてシステムを選定する必要があります。
保守、運用工数がかかる
自社で契約する場合は、当然保守、運用の人員も必要になります。その分工数がかかり、人件費が上昇する可能性があることにも注意が必要です。
アウトソーシングの場合
メリット
導入までの期間が短い
アウトソーシング先は一般的に顧客対応に必要なPBXやCRMシステムなどを保持しているケースが多いため、導入までの期間が短くて済むことが多いです。
月額支払いのため契約期間満了前の終了リスクや一括支払いリスクが低い
一般的に契約期間における月額費用形式での支払いが多いため、一括請求しないといけないなどのリスクが低減されます。
保守、運用工数がかからない
アウトソーシング先でシステムの保守、運用も実施するため自社での工数はかかりません。※その分システム費用が高くはなります。
デメリット
柔軟な運用やシステム構築ができない
アウトソーシング先は複数のクライアント先にシステムを提供できるよう一般的なレベルでシステム構築がされているため、自社のシステムとマッチしない、やりたいことがシステムでできないというケースが起こりえます。場合によってはアウトソーシング先のシステムから吐き出したデータを、自社用に加工して取り込むなどの追加運用が発生する可能性もあります。
システム費用が割高になる
自社契約ではないため、アウトソーシング先で運用保守の人件費などの間接的な費用が発生しています。そのため、同じシステムを使っても割高になるケースがあります。アウトソーシング先でシステムをシェアしている場合などもありますが、その場合は費用は割高になりませんがシステム負荷のリスクが高まるなどもあり得ます。
システムについては、Aシステムは自社で用意、Bシステムはアウトソーシング先で用意など、ハイブリットさせて構築するケースもあります。システムすべて自社かアウトソーシング先か、ではなくシステムそれぞれでどちらのものを使うのが最適かを考えましょう。また、システムで取り扱う情報によってはクローズドと呼ばれる専用の場所(個室)が必要になるケースもあります。アウトソーシング先との協議をしっかり行い、見極めるように注意してください。
比較3:場所
自社運営の場合
メリット
運営場所を自由に選ぶことができる
自社のオフィス内や同じビルの別フロアなど、運営場所を自由に選ぶことができます。同じオフィス内にあれば他部署との連携などもやりやすく、またコミュニケーションも取りやすいため業務を行いやすいケースが多くあります。
デメリット
スペースが不足する可能性がある
コールセンターが拡大していく場合、自社オフィスのスペースでは入りきれなくなるケースが考えられます。また、研修室や会議室など、他部署と共用することで使用タイミングが制限されることや、休憩室に人が入りきれないなどの問題が出る可能性もあります。その場合、自社のオフィス内と別でコールセンターを新たに準備しないといけなくなる場合もあるため、中長期的な就業スペースがあるかにも注意をしましょう。
スペースがない場合は物件探しからやらなければならない
自社内にコールセンターを設置するスペースがない場合は、物件探し~条件にマッチするか~契約~レイアウト変更など、時間とお金が多くかかります。
アウトソーシングの場合
メリット
場所を探す必要がない
アウトソーシング先は人員と場所を拠点として抱えているため、コールセンターの場所を探す必要がありません。
拡大した場合も他拠点で吸収できるため拡大コストがかからない
1つの拠点でスペースが不足した場合でも、他拠点がそのまま使えれば拡大のための初期コストはかかりません。ただし、クローズド環境を新しく作らないといけない場合などは、物件の初期費用やレイアウト変更代が発生する可能性があります。
デメリット
場所や環境などを選ぶことができない(選択肢が少ない)
アウトソーシング先に依頼する場合は、アウトソーシング先が持っている拠点を活用するケースが多いため、自社の近くにコールセンターを開設したいなどの要望は通らない可能性が高いです。また、他県などの遠くのコールセンターで開設することになった場合、遠隔のためコールセンター自体が見えずコミュニケーションがとりづらい、運用がブラックボックス化するケースもあります。訪問する場合も出張費がかかるなどデメリットがあります。
地代が請求費用として発生する
当然の話ですが、アウトソーシング先がお金を払ってスペースを確保しているため、その費用もアウトソーシング先から請求されます。明確に1席〇円、や、業務単価に含まれているなど様々なため見積もりを注意してみる必要があります。
自社が保有するフロアにアウトソーシング先の人員を連れてくる(インハウス)という選択肢もありますが、クライアント先に常駐することになるため人員が集まらないといったこともあります。場所についてもアウトソーシング先と協議を行い、双方にとって最適な開設場所、方法を決定しましょう。
比較4:備品
自社運営の場合
メリット
自社の予算内で自由にPCやヘッドセットを用意することができる
業務を行う上で必要なシステムを使用するためのPCのスペック、ディスプレイ、ヘッドセットなどを自由に決めることができます。PCのスペックが低いと後処理時間が伸びることなどもあるため、使用するシステムに合うスペックのPC等を選びましょう。
ランニングコストがかからない
備品を自社でそろえると初期コストが多くかかりますが、月額費用等のランニングコストは発生しないケースが多いためランニングコストは安くなります。中長期で利用できれば、月額料金よりコストメリットが多く出る可能性があります。
デメリット
初期コストがかかる
席数にもよりますが、コールセンターを1席準備する場合、デスク、椅子、PC、ディスプレイ、ヘッドセットなどが必要になり、1席20万円~30万円程度はかかります。10席でスタートする場合でも200万円~300万円ほどかかるため、初期コストが多くかかることになります。
備品管理が必要
自社で購入した備品は当然管理義務が発生するため、コールセンター内もしくはシステム部門側で管理が必要です。また、設定変更や破損、不具合対応も自社で行う必要がありますのでリソースの確保が必要です。
アウトソーシングの場合
メリット
初期コストがかからない
契約内容などにもよりますが、PC代などの費用は月額で使用料として請求、もしくは業務単価に含まれているケースが多いため初期コストは少なくて済みます。
管理が不要
設定や不具合対応など、アウトソーシング先で管理されるため自社での管理は不要です。
デメリット
ランニングコストが割高になる
初期コストはかかりませんが、ランニングで月額コストがかかり続けます。長期的に見るとランニングコストの方が割高になる可能性が高いため、許容できるコストかどうか注意が必要です。
PCやヘッドセット等を選ぶことができない
アウトソーシング側で備品を準備することになるため、PCのスペックやディスプレイサイズなど、準備してほしい備品の要望が叶わないことがあります。
備品については使用するシステムに必要なPCスペックや条件、システムの数に合わせてシングルディスプレイ、デュアルディスプレイなど業務内容に合わせてアウトソーシング先と協議をしましょう。アウトソーシング先に備品がない場合は、アウトソーシング先で準備してもらい月額費用に乗せるか、自社で購入し使ってもらうかなども話し合う必要があります。ネットワークの専用線を引く場合、自社オフィスとコールセンターの場所が離れている場合コストが多くかかる可能性もありますので、3の場所とセットで協議することをおススメします。
最後に
今回は自社運営とアウトソーシングの違いを4つの軸でご紹介しました。あくまで一例であり、様々な条件や状況によってどう選択すべきかは変わります。自社運営すべきかアウトソーシングすべきか判断がつかない、アウトソーシング先で運営してもらっているがコストがかかりすぎているなど、お悩みに関するご相談がございましたら、オンライン無料相談(30分)を行っておりますので、下記よりエントリーをお願いいたします。ご相談、お待ちしております。引き続きコールセンター業務に従事する皆様に活用いただけるブログを書いていければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
コールセンター管理職が知っておくべき用語シリーズ
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記事を書いた人
Cプロデュースコールセンターコンサルタント/アウトソーサー企業、化粧品通販会社等でコンタクトセンターに従事。顧客とのコミュニケーション設計構築から現場運用、委託先パートナー企業の管理を得意とする。
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