新人コミュニケーターのデビュー基準の考え方

新人コミュニケーターのデビュー基準の考え方

こんにちは!コンサルタントの山北です。
新しいコールセンターの立ち上げや、業務量増加・退職補填等で新人コミュニケーター(オペレーター)の採用はコールセンター運営には欠かせない重要なポイントの一つです。採用時の人材の見極めや待遇、自社雇用か派遣か、雇用形態をどうするかなど、各社で独自の採用ノウハウをお持ちの企業もあるのではないかと思います。ではみなさん、採用後に研修を受け、お客様対応を開始(デビュー)する際のデビュー基準は設けられていますか?採用条件のノウハウはあっても、デビューするときの基準がない(研修期間が終わったらお客様対応をそのまま開始してしまう)というコールセンターが意外とあります。採用時の人材フィルタリングはもちろん重要であることは言うまでもありませんが、新人研修を受け、お客様対応ができるレベルに至っているのかを確認する「デビュー基準」は、採用条件等では見つけられない課題や育成状況を見極める第二のフィルタリングとして非常に重要です。本日はこのデビュー基準の考え方について書いていこうと思います。

デビュー基準はなぜ重要?

「採用条件をクリアしているからデビュー基準はなくてもいいんじゃないの?」という企業もあるかもしれませんが、デビュー基準がなぜ重要かというと、「企業の顔としてお客様と接して良い最低限のレベルに達しているか」を見極めるためです。採用条件だけでは、想定していた人物なのか、業務上必要なスキルや知識を身に着けられるか、会社の顔としてお客様対応ができるコミュニケーションができるかなどの見極めは完全にはできません。デビュー基準がないままお客様対応を開始すると以下のような事象が発生します。

デビュー基準がないままお客様対応を開始すると…

  • 間違った案内、あいまいな回答をしてしまう
  • 処理を間違えてお客様にご迷惑をかける
  • 応対品質が悪くクレームを発生させてしまう
  • 通話時間、後処理時間が非常に長く生産性が悪い

結果、、

  • お客様からの信頼を失う
  • 顧客離反が起こる
  • 業務が一人でできないため管理者がつきっきりでフォローする 等

このようなデメリットが多く発生します。また、新人コミュニケーターから見ても、「研修を受けただけで自分はお客様対応できるレベルにあるのか不安」という気持ちは当然あります。はじめての環境で、限られた研修期間ではこのように感じるのは当然のことです。不安を抱え、自信がないままにお客様対応を開始してしまい、ミスや間違った案内をするとさらに自信を無くし、最終的には早期退職になってしまうというケースは珍しくありません。

上記のような事象を避けるためにも、新人研修を受けた後に「デビュー基準」を元にしたデビューテストを受け、合格したコミュニケーターのみがお客様対応をスタートできるようにすることは非常に重要です。また、『合格』という結果が出ることでコミュニケーター自身もお客様対応を開始する不安を取り除くことができます。

もし今運営されているコールセンターでデビュー基準を設けていない、設けているがデビュー後の新人に課題があるという方はこの後も是非読んでみてください。

デビュー基準の考え方のポイント

新人コミュニケーターはあくまでも『新人』ですので、高いレベルの応対品質や効率的な業務の実施をいきなり求めてもできません。デビュー基準を考えるときに重要なことは「ミニマムスキル」と呼ばれる『お客様対応に最低限必要なスキルは何か?』から考えることです。主には下記3種類に分かれ、業種業態に関わらず必須となるスキルです。

新人コミュニケーターのデビュー基準の考え方

1. 業務知識

ポイント

  • お客様対応するために必ず覚えておかなければいけないこと、調べる方法をわかっていれば良いこと、を分ける
  • 研修マニュアルに明記している
  • デビュー基準として具体的な項目として明文化する
例:
・顧客情報を特定するため、本人確認の3点項目を理解している
・契約内容の種類(5種類)を理解している

チェック方法

  • デビュー基準を元に知識があるかを計測できる方法で行う
  • 知識テスト(ペーパー、PCで受講)が一般的 ※学校のテストのようなイメージ
  • 100点満点中80点以上で合格、など明確な合格点を設ける
  • 問題数は業務内容や難易度によるが、20問~50問程度となるケースが多い
  • 問題は選択式、フリー記述、口頭文記述(どう案内するか?)など、デビュー基準のチェックとなる方法で作成する

不合格の場合の対応

  • 間違えた問題について自己学習or講師から再度研修するなど、振り返りの時間を与える
  • 必要な時間を空けて再テストを実施する

2. オペレーション・応対品質

ポイント

  • 企業としてお客様の対応をさせて良い『最低限の応対レベル』として定義する
  • 基本的には「オペレーション」「話し方」「聴き方」に分け、具体的な項目として明文化する
オペレーション例:
・本人確認の為に必要な名前、電話番号をヒアリングできる
・顧客情報を参照し正しい案内ができる
話し方例:
・お客様が不快に感じるような失礼な言葉遣いや口癖がない
・トークスピードが速すぎない(聞き取れないレベル)
聴き方例:
・お客様が不快になるレベルで話を遮ったり、かぶせて話したりしていない

チェック方法

  • 研修講師とのロープレ(テレトレ)にて、デビューチェック用の評価シートを使いチェックを実施
    ※上記ポイントを押さえたチェック項目を具体的に作成する
  • 最低限のレベルのため、可能な限り〇×評価の方が望ましい
  • 〇1つにつき5点、100点満点中80点以上で合格、など明確な合格点を設ける

不合格の場合の対応

  • ×がついた点を講師よりフィードバックし、再度ロープレにて重点的にトレーニング
  • 必要な時間を空けて再テスト(講師とのロープレ)を実施する

3. PC・システム操作

ポイント

  • お客様対応に必須となる最低限のPC操作、システム操作として定義する
  • PC操作、システム操作共に具体的な項目として明文化する
PC操作例:
・1分間に50文字以上のタイピングができる ※誤タイピングは10%以下
・システム操作例:顧客情報から〇〇システムにて商品配送予定日を確認できる
・顧客の登録住所変更処理を行える

チェック方法

  • ※オペレーション・応対品質と同様

不合格の場合の対応

  • タイピングの場合はタイピングソフト等を使ってトレーニングを行う
  • システム操作は知識不足の場合、個別に操作方法等を講師がフォローアップ
  • 操作に不慣れな場合は処理シナリオを複数用意し、繰り返しトレーニングを行う
  • 必要な時間を空けて再テスト(講師とのロープレ)を実施する

業種や業態、業務難易度によってポイントやチェック方法が違うケースもありますが、上記を基本として業務に合うカスタマイズをしていただければと思います。

最後に

今回は新人コミュニケーターのデビュー基準の考え方というテーマで書きました。デビュー基準に絶対的な正解はありません。各コールセンターの特徴に合わせて、適正がある人材をデビュー時に見極めるための基準、チェックが必要になります。デビュー基準があるかないかで、デビュー後のフォローアップの工数や、お客様との対応をスムーズに終わらせられるかなど大きく差が出てきます。是非一度今の基準の見直しや、基準自体がない企業であれば作成の検討をしていただければと思います。

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記事を書いた人

Cプロデュースコールセンターコンサルタント/アウトソーサー企業、化粧品通販会社等でコンタクトセンターに従事。顧客とのコミュニケーション設計構築から現場運用、委託先パートナー企業の管理を得意とする。

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